『報恩講(ほうおんこう)とは、浄土真宗の開祖とされる親鸞聖人の命日の前後に、親鸞聖人に対する報恩謝徳のために営まれる法要のこと』
今年の我が家での報恩講は午前9時からだという。
それはないよな、と思う。
お経を読んでる場合じゃないし。
今日の午前9時。
その時刻になったので、息子は2階の部屋のネットにつながっているパソコンへと向かう。
そして、これも時刻どおりに、ご院家さん(ごいんげさん:浄土真宗の僧侶)がやって来たので、私はそそくさと挨拶だけして、後の相手は親父に任せて階段の下に待つ。
ふすまの向こうの部屋からは、ご院家さんと親父との会話が聞こえる。
階段の上に、ようやく息子の姿が現れたと思ったら、ちょっと待ってというような仕草をして、自分の部屋から冊子のようなものを持ち出して、再びパソコンのある部屋へと消える。
ご院家さんと親父との会話は続いている。
まだ、お経は始まりそうにはない。
お袋と女房は台所でそわそわしている。
やがてまた、階段の上に息子が現れて、私を手招きする。
階段を上がり、パソコンのある部屋に行くと、パソコンの画面を指差しながら息子が私に言う。
「ねえ、ねえ、これって、間違ってないよね?」
それから、ご院家さんに事の次第を話した。
ご院家さんも喜んでくれた。
それから、お経が始まった。
お経の後の、ご院家さんの説教は、親と子とについての話だった。
有難い合格発表の日となった。