12月24日(木) 高3:1人
30分経過。誰も来ない。体育館の照明を消して靴を履き替えるときに携帯電話が鳴った・・・
照明を消すときには、昔のことを思い出していた。
あの日は小学校の卒業式があって、このクラブの日でもあった。
卒業するのは小2のころからクラブに来ていた子供たちであり、夕方からはお祝い会が行われることも知っていた。
体育館を開けて30分が過ぎても誰も来ないので照明を消そうとしたそのときに入り口の方から声がした。
「おっちゃん来たよ」
その男の子に続いて体育館に入って来たのは10人ばかりのいつもクラブに来ている卒業生たちとその弟たちが数人。
お祝い会の最中に子供たちが「これが終わったらクラブへ行こう」と話していたと、ある保護者から聞いたのは後日のことだった。
あの子供たちも、今は高校3年生・・・
「近くまで来たら明りがついてなくて、クラブやってないのかと思って電話したんですよ」
高1のときからクラブに来ている寮生で高3のTくんが、体育館に入るなり言う。
「たぶん今日が最後ですからね。年が明けたらテスト期間になって、それが終わったら卒業式まで自由登校で、自分は(郷里へ)帰って自動車学校へ行きますから」
「ほかにもだれか来るの」
「いや来ませんね」
それから1時間ばかり、それぞれ別々にバスケの練習。
「そろそろ帰ろうかな」
「そうだね、帰ろうか」
お互いボールなど片付けて、モップがけは2人だけだからやらなくてもいいかと思っていたら、Tくんが倉庫から2つモップを持ち出したので、2人並んでモップがけをしながら、普段はしない昔話を少しする。
「このクラブを始めてもう13年になるんだけど、昔は小・中学生ばかりでね。(Tくんの高校での同級生の)Yくんたちは小2の頃から10人ぐらいでずっと来ていたりしてね・・・中学生は高校に入ると来なくなってたけど、君らの2級上の子たちは高校生になっても続けて来るようになってね・・・」
「そうですか、後輩たちにクラブをつなぐよう言っときます」
「ありがとう」
体育館の照明を消し、靴を履き替えるときに先に玄関を出ようとするTくんが振り返って言う。
「なんか、名残惜しいですね」
「そうだね。じゃあ、さようなら」