部屋のカーテンを少し開けると灯りがついていました。
床に就くときには灯りはついていませんでした。
帰宅してからずっと気になっていたのです。
「帰ったんだな」とその灯りを見ながら思いました。
私の勤める病院に入院している隣の家のおじさんが危篤状態だということを聞いたのは夕方のことでした。
明日出勤したときには、もうここにいないかもしれないと、そっと私に教えてくれた看護師は言いました。
明日からのことを思って午後11時には就寝しました。
目が覚めて、田畑の向こうにある隣の家の灯りを見たのは午前1時でした。
それからまた寝ました。
次に目が覚めたのは午前3時でした。
長い夢を見ていました。
隣の家の灯りはついたままでした。
今度は眠れなくなりました。
早くから活動を始めた車の音が聞こえてきました。
そしてまた夢を見ていました。
「来られたよ」
女房の声で目が覚めたのは午前6時でした。
あわてて玄関へ行くと、そこには喪主となる人が立っていました。