bunbunの記

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海岸線は測れない

 

海岸線の長さを測定する場合、スケール(縮尺)のきわめて大きな地図を使って測定するのは、実に容易である。海岸線がのっぺりとした線に描かれているからだ。ところがもっとスケールの小さい地図を使うとなると事情はだんだん複雑になってくる。単純に見えた海岸線が、複雑に入り組んだ入江とか岩床でできていることが、しだいに見えてきてしまうからである。このとき海岸線の長さは、最初の場合よりもはるかに大きくなってくる。この視覚の微細化のプロセスはさらに続けられる。測定のスケールを小さくしていけばいくほど、海岸線は複雑さや不規則性の度合を増してくる。砂粒のひとつひとつが見えるほどにまで「視力」を増大させるならば、それをたどっていく海岸線の長さは、信じられないくらい長大なものになり、ついには無限大にむかって開いていくようになるだろう。中沢新一「雪片曲線論」)

この文章のあとになにか気の利いたことを書ければいいのだけど、書けませんね。

 

若いころ読んで、印象に残っている文章です。

 

我々が生きているこの世界のすべてが、このようなものであるのだと私も思います。