「それではもうすぐスタートです。さっきまでの雨で湿気てるかもしれませんからね。たとえかすってもピストルはやり直しませんから、みなさんスタートしてくださいね」
そんなアナウンスの後のピストルの音を合図にして、スタート兼ゴール地点である谷間のスキー場のサイトから50名のランナーたちは一斉に谷川に沿って下る山道へと向かって行ったのです。
でこぼこの細い山道にときおり交わる小さな沢を跳び越えて、複雑な段差に足を合わせながら、後ろから迫るランナーに速度を落とすこともできず、集中して、翔けるように、そして、いつまでも続く下り坂に追い詰められるようにもなりながら、標高700mの地点から400mあたりまでの2キロの道を一気に駆け下りました。
(実際は小さな沢には木製の橋が渡してありましたが、走っているときの感覚はこんな風でした)
それから今度は急な登り坂です。
トレイルランとは立ち止まって休むことをしない登山なのだと思いました。
登り坂では走ることなどできません。
ひたすら登る。
登りながらも数人のランナーに追い抜かれていく。
それでも登る。
なんとか稜線にたどり着いて、それから走り始める。
脚は次第に鉛と化して行く。
わずかな上り坂でも走ることが苦しくなる。(だからほとんど歩く)
自分の前後にいるランナーの数が次第に減っていく。
雨が降る。
持ち物が濡れるのは心配だけど、降る雨自体は火照った体に心地よい。
そんな感じで山の中を走ったり歩いたりするわけです。
そして3つ目の峰を下るところから、さらに試練が・・・
昨日の雨とさっきまでの雨で、急斜面の道がどろどろ状態。
何度も滑りそうになり、実際何度か尻餅をつきながら数十メートルは続く道を、道の脇に生えた小さな木や笹などを握りながら恐る恐る戸惑うようにして下り、それから同じようなどろんこの道をときには用意されたロープを持ってよじ登るようにして最後の峰へと向かったのです。
で、結果は終わりから数えて5番目で、時間は21キロを5時間15分ぐらいでした。
(1位は2時間20分ぐらいだったそうです)
つらかったけど、意義深い体験でした。
しかも、大会会場は私の地元です。
昔から山が好きな私で近くの山はほとんど登っているのですが、なかなかその機会がなかった山々をいっぺんに4つも登ることができました。
丸瀬山(1,021m)
三ツ石山(1,163m)
阿佐山(1,218m)
畳山(1,029m)